「RTM(Route to Market)」について書いていきたいと思います。
・足を使ってお客様を訪問する営業のどこが良くないの?
足でのお客様周り営業で鍛えた隆々とした「ヒラメ筋」をテーマにしたオンライン営業のCMが話題になったりしていました。
以前は、「営業は足で稼ぐ」ってよく言われていました。
しかし、時代の流れや社会環境の変化で、お客様に行かない営業っていうことが随分と世間的にも受け入れられてきたように思います。
ただ、むやみやたらにお客様に行かないことが良いというものではありません。
やはりそこで重要なことが、ROI(Return On Investment、投資対効果)ですね。
足を使って工数を使うべきことと、お客様に行かなくても効率的にできることを見極めることが重要です。
このような営業の働き方や役割分担を検討する際にフレームワークがRTM(Route TO Market、ルートツーマーケット)です。
今回は「RTM(Route to Market)」について紹介してきたいと思います。
※RTMはCRMの基本です。
CRMについては、以下の記事も是非読んでみて下さい
コンテンツ
1.RTMって何?
RTMとは、様々な商材をお客様に営業する際に、以下を定義することです。
誰に対して(お客様セグメント)、何を(商品/サービス/ソリューション)、誰がどのような役割(営業プロセスと役割分担)を担って営業活動を行うか
得られる主要な狙いとしては以下の3つがあげられます。
最適な営業の配置
お客様のポテンシャル(今後の受注の見込み等)に応じて、営業担当者のリソースを最適に配置することを可能にします。
お客様のカバレッジの最適化
対面営業や非対面営業、各商材毎の専門家の専門営業等、お客様カバレッジの最適化を可能にします。
営業生産性の向上
営業の配置やカバレッジを最適化することで、限られた営業担当者や販管費で最大の売り上げを上げることを可能にします。
2.RTMで得られる効果
RTMでは、大きくは以下の3つの効果を得ることが可能になります。
増力化効果
増力化の効果としては、
- ポテンシャルが高いお客様の接点時間の向上
- ポテンシャルが高いお客様への提案件数・提案単価の増加
- 有力なお客様におけるカスタマーシェアの増加
があげられます。
省力化の効果
省力化の効果としては、
- 移動時間等付加価値を生まない時間の削減
- 営業一人当たりの生産性の向上
- 余剰な営業担当の創出・再配置によるコスト削減
があげられます。
お客様満足度の向上
一番重要なのはお客様満足度です。
お客様の声(VoC;Voice of Customer)として、「外出をしていて中々連絡がつかない営業より、常に社内にいて、タイムリーに情報を提供してくれる非対面の営業の方がとても自分達の役に立ってくれている」という意見です。
たまに来て、依頼をしても、きちんと依頼に回答するのに次回の訪問まで待つということを無駄に感じているお客様が増えているようです。
3.RTMを設計するための3つの要素
では、この重要なRTMはどのように設計すれば良いのでしょうか。
重要な要素は以下の3つだけです。
お客様のセグメンテーション
お客様セグメンテーションはCRMの基本です。
当然、自社にとって売上高も利益も高いお客様をカバーすることは、営業の大前提です。
しかし、時にお客様は地方含めて様々な性格の事業所を持っています。
研究開発拠点であったり、工場であったりです。
商材にもよりますが、各事業所単位で一定金額までの決裁権限を持つ事業所もあります。
その為、本社だけを責めていても売り上げにつながらず、中々行くことができない地方の事業所にどうアプローチするかということを考えることが重要になります。
商品のカテゴリー
取り扱いする商品のカテゴリーは大きく分けて3つあります。
- Off-the-Rack(汎用品)
- マスカスタマイズ
- 一品一葉
Off-the-Rack
棚からとってそのまま購入できる汎用品です。
汎用品ですので、商品の使用は必ず同一なため、営業が高度な知識持たなくても、お客様が判断することが可能な商品です。
マスカスタマイズ
基本的には、Off-the-Rackの汎用品を組み合わせることで、販売することができる商品です。
ただし、組み合わせる商品によりできることできないことがあり、商品に関する高度な知識が要求されます。
一品一葉
お客様や案件毎に、提供する内容が異なるものです。
例えば、大型の建築物を構築するとか、パッケージでは対応できない個別の大規模システムを開発するような案件です。
私たちのコンサルティング案件も、お客様が同じでも、毎回毎回内容が異なるという点で、一品一葉です。
営業のプロセス
営業のプロセスは、大抵の場合お客様の意思決定プロセスに応じて、5~7位のステップから構成されます。
しかし、分かりやすく大きく分けると、2つに分けることができます。
お客様カバレッジ(課題の発掘・醸成)
商談を発掘するまでにお客様の悩み事や課題をヒアリングして、商談発掘をするお客様カバレッジと言う役割・ステップです。
提案・クロージング
お客様から出てきた案件に対して、具体的な提案や見積りを作成する役割・ステップです。
先ほどの、商品のカテゴリーがシンプルであれば、役割分担もシンプルで、一人の営業がこなすことができます。
しかし、先ほどの大型の建築物やシステム開発になると、一人で全てをこなすことは困難です。
そこで、RTMでの営業体制・役割分担の考え方が必要になります。
4.実践!RTMを考える
多分、商品カテゴリーで考えるのが分かりやすいと思います。
Off-The-Rack(汎用品)
例えば、Amaozon.comをイメージすると分かりやすいと思います。
Amaozon.comでは、モノを売るのに対面の営業は必要ないですよね。
全てがデジタルで対応しています。
お客様のニーズの確認や醸成、契約の案内やクロージング、発送まで全てがデジタルなシステムで完結します。
マスカスタマイズ
様々な商品を組み合わせたマスカスタマイズ商材の場合は、自分で判断して購入してみたものの、実際に組みあわえて使うおうとすると、組み合わせがちょっと違うとかで動作しないようなこともありますよね。
例えば、このようなケースでは、事前のニーズの喚起や醸成、各種の情報提供はお客様カバレッジと言われる営業が担当することで、対応が可能です。
しかし、詳細な仕様を確認し、動作を保証するには、その領域の専門営業が担当する必要が出たりします。
案件の複雑さにより、専門営業はオンライン(非対面)営業でも担当できますし、より高度かつ詳細な仕様の調整が必要な場合は、対面の専門営業が担当します。
一品一葉
一品一葉の営業は、比較的案件の規模の大きさや複雑性から、早いタイミングから専門営業が担当します。
ましてや、我々のような経営コンサルティングの案件であれば、専門職のコンサルタントでなければお客様への提案はできません。
そのため、お客様のカバレッジからセリング・クロージングまで、コンサルタントが行うことが基本です。
5.まとめ
RTMはあまり日本ではなじみのない考え方、フレームワークです。
というのも、国土の広い米国を中心に、お客様を訪問しない非対面の営業や、対面と非対面の営業を組み合わせたチームセリングと言う考え方は、20世紀後半かた取り入れらているとのことです。
20年遅れくらいかもしれませんが、RTMは営業の在り方を考え直す重要なフレームワークですので、是非活用してみて下さい。