「Will/Skillマトリックス」について書いていきたいと思います。
・チームの若手でやる気がない奴がいるけど、どうやって教育すれば良いの?
会社にもよると思いますが、4月以降新人が現場に配属されてきますよね。
社会人としての基本的な教育は受けていると思いますし、会社によっては結構長い期間をとって会社の業務を教育している会社もあると思います。
しかし、現場に配属されたからと言って、すぐに会社の業務をこなすことは困難です。
どんなに基本的なスキルが高く知識があっても、やはり現場の業務に対応できる実践的なスキルが十分でないからです。
そこで、登場するのがOJT(On the Job Trainingの頭字語)です。
今では、どこの会社でも多く取り入れられているOJTですが、もともとはチャールズ・R・アレンという人が考えた「4段階職業指導法」に端を発しています。
第一次世界大戦の際に、大量の軍艦を造るために膨大な数の素人工員を短期間で教育・育成するために使われたことで注目を集めました。
- やってみて手本を見せる(Show)
- 説明して理解させる(Tell)
- やらせてみる(Do)
- できたかどうか確認し指導する(Check)
といった4ステップを通じて教育をしていく方法です。
しかし、この4ステップも、そもそもその人がどのようなスキルのレベルにあるのかや働き方や仕事に対してどういう意識を持っているかがか分からなければ、どのレベルからどのように進めていけば良いか分からないですよね。
そこで活用できるのが「Will/Skillマトリックス」です。
組織の責任者や管理者でない若手の社員の人も、OJT等で社員を育成する機会が今後増えていくと思います。
そこで、今回は「Will/Skillマトリックス」について紹介していきたいと思います。
コンテンツ
1.リーダーの成長を促す経験とは?
アメリカの非営利組織で、リーダーシップ育成では世界的に有名なCenter for Creative Leadership(CCL)という組織があります。
この組織の研究成果の一つでリーダーの成長を促す経験には、以下の3つの要素が必要と言われています。
- アセスメント(評価・測定)
- チャレンジ(困難を伴う課題)
- サポート(支援)
これらの3つの要素が備わっている場合にはリーダーの能力開発に最も効果的であるというものです。
OJTを開始するにあたり、教育される人、例えば新人の現状を評価して、今後の教育の方向性や方針を検討することも重要ですが、皆さんが次世代のリーダーに成長していく上でも、アセスメントは成長を促すための重要な経験と言われています。
ただ、無手勝流にアセスメント(評価・測定)を行っても意味がありませんよね。
その一つの解決方法が「Will/Skillマトリックス」です。
2. Will/Skillマトリックスってなに?
Will/Skillマトリックスは、縦軸にSkill、横軸にWillを置いたツーバイツーのマトリックスです。
Willは仕事等へのやる気を表し、Skillは能力を表します。
これにより、部下や後輩のタイプを把握することで、より適切な指導や指示、アドバイスの方法を考えるためのフレームワークです。
それぞれの象限についてみていきましょう。
① の象限:やる気が高く、能力も高い人
非常に有能な人ですよね。
色々指示や指導をするとかえって逆効果かもしれません。
思い切って、仕事を任せて、考えて行動させることが重要な人ですね。
② の象限:やる気は高いが、能力が低い人
ちょっと扱いにくい人材ですよね。
やる気があるので伸ばしてあげたくても、能力が追い付かず、空回りしていることが多いです。
やる気を損なわずに、一つ一つの仕事を指導してあげることが重要です。
③ の象限:能力は高いが、やる気が低い人
ちょっと残念な人ですね。
折角持っている能力を生かし切れていない人です。
こういう人に、どうやる気を起こさせるのか、成功体験を積むなどモチベーションを高めるための指導が必要です。
④ の象限:能力が低く、やる気も低い人
放っておくと落ちこぼれていってしまう人です。
でも、給料を払っている以上は、放っておくわけにはいきません。
まずは、詳細な作業指示を出して、何も考えずにその通り作業をしてもらうことから始めることが重要です。
3. Will/Skillマトリックスの活用の仕方
では、自分の部下や後輩の状況を把握することができたら、それをどう活用するかです。
冒頭にご紹介した米国のCCLでは、組織には3つのタイプの人材がいると言っています。
Ⅰ.積極的学習者
Ⅱ.消極的学習者
Ⅲ.学習拒否者
Skill(能力)を高めるためのWill(やる気)についての考え方です。
Will/Skillマトリックスの①の象限には、積極的学習者が多くいるタイプです。
自らのスキルを高めるために、自らどんどん学習する人たちです。
➁の象限にもいるタイプですが、➁の象限の人は努力が結果につながらない人たちです。
消極的学習者は、Will/Skillマトリックスの③の象限に多くいるタイプです。
何らかの報酬が得られるのであれば、勉強を行う人たちです。
自分自身のスキルの育成自体にはどちらかというとあまり興味を持っていないことが多いですね。
学習拒否者は、言うまでもなく、Will/Skillマトリックスの④の象限に多くいるタイプです。
あまりやる気もないし、創造的なことが苦手な人が多いです。
言われたことは仕方ないので、とりあえずやるだけの人ですね。
このような個々人の学習意欲の持ち方等も参考にしながら、どうやってWill/Skillマトリックス②~④の象限の人たちを①の象限に移していくかの教育や指導の方針、方法を考えるのです。
④ の象限の人たちへの対処法
能力も低いので仕事も遅く、やる気もないので、時々遅刻してきたりとか、よく体調悪いと言って年休をとる人たちです。
この人たちは、まずはじめに③の象限に持っていくのが良いのか、➁の象限に持っていくのが良いかを考えると良いと思います。
ポテンシャルの能力があまり低いのであれば、まずは会社に来てもらって、指示したことを最低限処理してもらうところまで持っていくのが第一歩かと思います。
自分が貰っている給料の分は最低限働かなければならないことを理解してもらうことから始めます。
一方で、ポテンシャルとしての能力はありそうな人には、研修プログラム等を通してスキルを身に着けてもらった上で、少しずつ仕事の上での達成感や成功体験を味わってもらうことも重要です。
このような積み重ねが、前向きに取り組む姿勢につながっていくようになります。
③の象限の人に対しての対処法
個人的には、③の象限の人は苦手です。
能力があるのに斜に構えて、真剣に仕事に取り組んでいない人が多いように感じています。
能力がある人に、モチベーションを上げるようなアドバイスをするのもちょっと気が引けるところがあります。
ただ、自分が納得したことや、興味があること等には非常に高い力を発揮するので、
- 業務の目的や意味
- 完了させることの重要性
などをきちんと共有して、納得してもらうことが重要です。
いくら能力があっても、その能力を使わずに放っておけばすぐに④の象限の人になってしまいます。
継続してコンスタントに能力を発揮してもらうような取り組みを心がけると良いと思います。
➁の象限の人に対しての対処法
やる気は高いけどスキルが低い➁の象限の人には、研修の機会も重要ですが、OJT等できちんと仕事を指示して、一つ一つの仕事をきちんと完了させていくように指導することが肝要です。
➁の象限の人で時々、「自分はやる気も能力もあるのに、実績が出ないのは上司や同僚の指示が悪い」と本気で思っている人がいます。
そのような人には、簡単な仕事から少しずつ始めて、
- 仕事を完了させる手順やポイント
- そのために気を付けるべきこと
などを実践を通して学んでもらうことが重要です。
➁の象限の人は会社の仕事とスキルがミスマッチを起こしていることもよくあります。
きちんとのその人の能力や適性を見極めて、より良いその人にマッチした仕事をアドバイスしてあげることも重要です。
① の象限の人に対しての対処法
① の象限の人は黙っていても、仕事に対してもスキルの育成に関しても自分自身で取り組んでいきます。
コンサルティングファームに多いタイプです。
仕事の責任範囲を増やしたり、ちょっとストレッチした研修に参加してもらうとか挑戦する機会を作ってあると良いと思います。
4.まとめ
よくOJTという言葉はいろいろなところで耳にするのですが、OJTって言うほど簡単なことではないと思っています。
特に、若い人に任せることが多いですが、任された人も結構悩んでいると思います。
若い人がいろいろ指導したり、時に無理強いしてもなかなかアクションや成果に結び付かないことも多いです。
そんな時は、GROWも活用してみてください。
自分自身でゴールに向けて何をすべきかを一緒に考え、自分で考えて決めたゴールに向けて、自らがすべきことに腹落ちして、能動的にアクションを取らせるようにするのです。
※GROWについては以下の記事を参考にしてみて下さい